双眼鏡の種類
スタンダード双眼鏡
基本的スタイルの双眼鏡。
対物レンズ径は30~50ミリで内部にポロプリズムを片側2個、合計4個内蔵しています。
無理のない設計のため像は明るく安定しています。
倍率は7、8、10倍が主流です。
携帯性はやや悪いもののオールマイティーに使えます。
ズーム双眼鏡
スタンダード型にズーム機構を組み込んだ双眼鏡で倍率を自由に変えることができます。
さまざまな倍率設定のものが市販されていますが、8~20倍程度のものが実用性が高く、比較的像も安定しています。
重量が重くなるため高倍率時手ぶれを防ぐためにカメラ三脚などに固定して使用するのが一般的です。
携帯性はあまり期待できません。
ダハ型双眼鏡
片側3個のプリズムを一つに張り合わせてありますので狂いが少なく、コンパクトに作られているのが特徴です。
このプリズムが屋根の形(ドイツ語で屋根=ダハ)に似ているのでこうよばれます。
対物レンズ径16~25ミリ、倍率は6、8、10倍ぐらいが主流です。像は安定していますが、スタンダード機に比べ明るさがやや低下します。携帯性よく野外派向きです。
コンパクト双眼鏡
小型のポロプリズムを組み込んだコンパクトな双眼鏡です。
デザインが豊富で女性の方にも違和感なく利用できます。
対物レンズ径20~25ミリ、倍率7、8、10が一般的。
軽く作られているのも特徴で観劇やコンサートなどによく使われています。
コンパクトズーム双眼鏡
コンパクト機にズーム機構を組み込んだものですが、機構上一回り大きくなります。
対物レンズ径22~28ミリで倍率はさまざまな設定のものが市販されていますが、明るさの点であまり高倍率のものはお勧めできません。
最高倍率25倍程度のものが実用的です。
双眼鏡の豆知識
倍率と有効径
双眼鏡の基本性能をあらわします。
双眼鏡本体には8X30などと表示され、この場合8は倍率を30は対物レンズの大きさ(有効径)をミリで示します。
同じ倍率なら有効径が大きいほど明るく見え、逆に同じ有効径なら倍率が高いほど視界は暗くなります。
実視界
双眼鏡本体にはField 6.8°などと表示されますが、これは双眼鏡を覗いて実際に見える範囲を角度で表したものです。
倍率が高くなる程視界は狭くなります。
瞳径
双眼鏡を明るい方向にかざしてみると、接眼レンズの中心に明るい円が見えます。これを双眼鏡の瞳といい直径が大きいほど明るい双眼鏡といえます。
コーティング
双眼鏡のレンズには光の透過率を良くするためコーティングを施すのが普通ですが、さらに透過率を高めたり、色調を整えたりするために何層にもコーティングを施すマルチコーティングが高級機には使われます。
冴え冴えとした視界が期待できます。
プリズム
通常双眼鏡のプリズムはBk7という光学硝子素材が使われますが、さらに屈折率の高い素材のBak4を使ったものが高級機にはよく使われています。
アイレリーフ
全視界を覗くことができるときの接眼レンズ゙から眼までの距離をミリで表しています。アイレリーフが長いほど全視界を楽に見ることができ、メガネを掛けての使用に適しています。像の良し悪しには関係ありません。
双眼鏡の選び方
双眼鏡を選ぶ際、ついつい倍率だけに関心が片寄りがちですが、双眼鏡の良さはなんといっても両目で見ることによる立体的で明るい視界が得られることです。つまり倍率と明るさ、そして視界の広さがバランスされたものが使いやすい双眼鏡といえます。
対物レンズの径が同じなら倍率が低いほど明るく、視界も広くなることは前述しました通りです。
昼夜を問わず双眼鏡をお使いになるのなら有効径が大きく倍率の低い7X50がお勧めですが、携帯性も考慮に入れるなら有効径30ミリ前後で倍率7~10倍程度のものが使いやすいといえます。
小型のズーム式を選ぶなら最高倍率がなるべく低いものの方が利用範囲が広がります。
またスポーツ観戦など動きの速い対象を見るときなどは視界が5度以上あるものがよいでしょう。
対物レンズ径別の推奨倍率を示しますので参考にしてください。
この範囲であれば気持ちの良い視界が得られるはずです。
口径 |
推奨倍率 |
明るさ |
推奨実視界 |
用途 |
21mm |
7~8倍 |
9~6.9 |
6・5度以上 |
観劇、スポーツ観戦、旅行 |
25mm |
8~10倍 |
9.8~6.3 |
6度以上 |
スポーツ観戦、野外コンサート |
30mm |
7~12倍 |
18.4.~6.3 |
7度以上 |
自然観察、バードウォッチング |
40mm |
8~12倍 |
25~11.1 |
6,5度以上 |
自然観察、バードウォッチング |
50mm |
7~16倍 |
51~9.8 |
6度以上 |
天体観望、自然観察、監視 |
70mm |
11~18倍 |
40.5~15.1 |
4度以上 |
天体観望、自然観察 |
80mm |
16~20倍 |
25~16 |
3.5度以上 |
天体観望、自然観察 |
双眼鏡の倍率と見え方比較
肉眼野視界
人間の眼の視界は大変広く左の写真のようなイメージにはなりませんが、仮に鷹をこのような大きさで見ていた時に双眼鏡を使った場合の見え方を再現してみました。
倍率が上がると視界(見える範囲)は狭まってきますが対象を拡大してみることができます。
7倍 50ミリ
明るくスッキリした視界が得られる7X50は双眼鏡のスタンダードです。天体観望にもよく使われます。
10倍 50ミリ
もう少し表情まで観察したいとなると10X50もお奨めです。
16倍 50ミリ
拡大率はアップしますが、動き回るような対象を見るには不向きです。
16X50はあまり生産されておりません。
30倍 50ミリ
動きのある対象を視界に捉えるのが困難です。遠方の動かない対象を見る用途になります。
30倍という倍率がズーム双眼鏡で得られます。
対物レンズの大きさによる見え方比較
7倍 50ミリ
もっとも明るい視界が得られるのが7X50です。
薄暮時などは肉眼より明るく見ることができます。
携帯性を考慮すると少々大きく感じるかもしれません。
7倍 35ミリ
日本ではあまりなじみのないサイズですがアメリカなどでは一般的で使いやすい双眼鏡です。
日中の使用では7X50と殆ど差異は感じません。
7倍 21ミリ
コンパクトサイズの双眼鏡になります。携帯性は抜群です。
日中での使用では不満はありませんが薄暮時には暗さを感じると思います。また解像力も若干低下します。
左の写真は倍率が同じでも対物レンズの大きさが変わると見え方に変化があることを表しています。但し同じ倍率、対物レンズ径でも使われるレンズ精度、材質、コーティング等により見え方に差異が生まれます。
人間の瞳は最大で7mm程度ですが、周囲が明るく眩しい時にはカメラの絞りのように瞳は小さくなります。
つまり余分な光が入射するのを防いでいる訳です。
双眼鏡を覗いた時も同じように機能しますので、明るい場所で双眼鏡を使用した場合には上の写真のような差異は感じません。
但し解像力は対物レンズが大きいほど良くなりますので、双眼鏡を選ぶときに参考にしてください。
双眼鏡の違いによる見え方比較
双眼鏡には見える範囲を表す実視界は表示されています。通常 Field6.5°のように表示されています。
同じ倍率でも実視界が広い双眼鏡は見える範囲が広くバードウォッティングやスピード感のあるスポーツ観戦などに最適です。
8倍40ミリ 実視界6.5°
一般的な8X40の視界です。
8倍40ミリ 実視界8.2°
同じ8X40ですから左の写真と比べても目標の拡大率は同じです。
ただイメージサークルが拡大してより広範囲を見ることができます。
4倍22ミリ 実視界17°
倍率は4倍ですから目標の拡大率は8倍に比べ半分ですがさらに広い視界が得られています。目標を探査。捜索するのに大変適しています。
双眼鏡の歴史
読んで字の如し、双眼鏡とは両目で見る望遠鏡のことですが、望遠鏡が作られた17世紀始めに双眼鏡も作られ始めたようです。
かの有名なガリレオ・ガリレイは帽子に取り付けられるような小型の双眼式望遠鏡を使っていたとの記録もあります。
ガリレオ式望遠鏡は対物レンズに凸レンズ、接眼レンズに凹レンズを使用しますので像は正立します。
ただこの方式は高倍率が得られないことと、視界が狭いことなどで、現在は2~4倍のオペラグラスとして利用されています。
今日のプリズム式双眼鏡の原型は、1854年フランスのポロによって考案されました。
対物凸レンズと接眼凸レンズの間にプリズムを入れて正立像を得る方式です。
現在でも双眼鏡内の直角プリズムのことをポロプリズムと呼ぶのはこのことに由来しています。
19世紀の末、ドイツのアッペによって近代双眼鏡が開発されました。
その後の双眼鏡の発達は、戦争によるところが大きく、20世紀に入って各種兵器が開発されると共に双眼鏡もその性能を向上させてきました。
日本でも優秀な双眼鏡が作られ、第2次大戦後の輸出品の上位を双眼鏡が占めたこともありました。
現在では輸入品も含めさまざまな種類の双眼鏡を手にする事ができますが、用途に合った双眼鏡を選んでください。