対物レンズで集めた光を直接接眼レンズで拡大して見る形式です。
光路が単純なだけにコントラストも良く、視界全体に落ち着いた良像を結びます。
またメンテナンスも簡単で、初心者にも違和感がありません。
焦点距離にもよりますが、観測対象はオールマイティーです。
対物にアクロマートレンズを使ったものは若干色収差が残ります。
フローライトなどの高級素材を使ったアポクロマートレンズは極限の収差補正が可能ですがサイズの割に高価です。
集光に対物レンズを使わず反射鏡を使って集光し、さらに斜鏡で光路を90度曲げて接眼レンズで拡大して観測するタイプです。
色収差がなく、視界中心部は極めてシャープな像が得られます。
安価なものは主鏡に球面鏡を使用しますので、球面収差が残りますが、パラボラ主鏡を使ったものは収差ゼロの精鋭像が得られます。
月面、惑星、星雲、星団観測に向き、天体写真撮影にも適してします。
急激な温度変化が生じると筒内気流の影響で像が安定するまで若干時間が掛かります。
またベストコンディションを保つためには定期的なメインテナンスが必要になります。
小望遠鏡の適正倍率でみた土星のイメージ。
口径が小さいので解像力が甘くなります。
口径100mm程度の望遠鏡で見た土星のイメージ。倍率は最高倍率以内。
良い解像を示しています。
口径100mm程度の望遠鏡で、倍率を最高倍率の3倍、つまり300倍迄上げて見た土星です。明るさが低下し解像も悪化しているのがわかると思います。
その望遠鏡に合った見やすい倍率というものがあります。
おおむね口径の半分の倍率がその望遠鏡の最低倍率、口径と同じ倍率が中倍率、口径を2倍した倍率がその望遠鏡の最高倍率と覚えておいてください。
口径60ミリの望遠鏡でしたら30倍程度が低倍率、60倍前後が中倍率、120倍が最高倍率ということになります。
過剰に倍率を上げ過ぎると視界は暗くなり解像も悪くなってしまいますのでご注意ください。
見え方のイメージは左図のようになりますので参考にしてください。
肉眼でも星空を楽しむことができますが、その場合貴方の眼は有効径7ミリ、倍率1倍のおそろしく視界の広い望遠鏡といえます。
天体観測の場合は、倍率よりもむしろ有効径、つまり分解能や明るさによって左右されることが多く、高倍率が必ずしも良く見えるとはかぎりません。
観測対象と有効径により適当な倍率が決まっています。
双眼鏡 7~10X |
50mm 分解能 2.3秒 |
60mm 分解能 1.9秒 |
80mm 分解能 1.5秒 |
100mm 分解能 1.2秒 |
150mm 分解能 0.8秒 |
|
---|---|---|---|---|---|---|
月 | 月の全景 | 50X~ 大きな谷やクレ-ター |
50~100X 谷やクレーターの細部 |
50~150X 海の起伏や谷の詳細 |
50~180X かなり詳しく観測できます |
50~250X 小クレーターも良く観察可能 |
水星 | 位置確認 | 位置確認 | 100X 水星の形がわかります |
100X 淡い模様が分かります |
100~150X 淡い模様が分かります |
100~200X 模様の様子が分かります |
金星 | 位置確認 | 50X~ 三日月形が分かります |
50~100X 三日月と半月の区別ができます |
100~150X 形の変化が良く分かります |
100~150X 形の変化や淡い模様の確認 |
100~250倍 形の変化や模様の観察ができます |
火星 | 位置確認 | 50X~ 大きな模様が分かります |
50~100X 極冠や大きな模様が分かります |
100~150X 極冠や主な模様の観測が可能 |
100~150X 極冠の変化が確認できます |
100~200X 本体の模様と太い運河が確認可能です |
木星 | 衛星の確認 | 50~100X 2本以上の縞・衛星の確認 |
50~100X 3本以上の縞と衛星の観察 |
100~150X 大赤班が分かり衛星の影も確認 |
100~180X 縞の細部を見ることができます |
100~250X 縞の細部を観察することが可能 |
土星 | 位置確認 | 50~100X リングや本体模様の確認 |
50~100X リングや模様、衛星チタンの確認 |
100~150X リングの角度によりカシニの溝確認 |
100~150X カシニの溝確認と他の衛星確認 |
100~250X リングの溝、本体模様、衛星数個の観察 |
星雲・星団 | 主な星雲・星団観望 | ~50X 主な星雲・星団の観望 |
~50X 同左 |
50X~ メシエ番号のついたほとんどの星雲・星団の観望 |
50X~ 主な球状星団が高倍率で星に分解して見える |
50X~ 星雲・星団がはっきりと雄大に美しく見える |
●表中以外にも、アルビレオ、ミザールなどの有名な重星や極大光度8等星以上の変光星など低倍率で美しく観測できます。
また彗星や流星群などは双眼鏡を使うと楽しく観望できます。
●この表の倍率は、有効径の大きさから決めた、一番見やすい倍率です。見え方については、周囲の状況や天候そして大気の状態により大きく左右されます。
●表中火星の見え方表現は2年ごとに訪れる接近時を基準としています。
1608年望遠鏡は、オランダの眼鏡師ハンス・リパシーによって偶然発見され、同年10月リパシーは特許を申し出ています。
翌1609年ガリレオ・ガリレイは物理学的にレンズを研究、凸レンズと凹レンズを組み合わせた望遠鏡を製作しました。
これがガリレオ式望遠鏡です。
倍率があまり出せないので今日ではオペラグラスとして使用されています。
1611年凸レンズと凸レンズの組み合わせによる望遠鏡が考案されました。
これがケプラー式望遠鏡で、現在の望遠鏡の元祖になります。
17世紀始めは天動説から地動説に移り変わる時で、多くの天文家が望遠鏡を使って地動説を立証しています。
しかしこれらの望遠鏡は、各収差がひどく、特に単レンズのため色収差が著しく、これを少しでも改善するために長大な望遠鏡が出現することになりました。
そのためレンズを使用する屈折式望遠鏡は次第に行き詰まることになります。
1688年アイザック・ニュートンにより凹面鏡を利用した反射望遠鏡が作られ発展しますが、凹面が金属を磨いて作ったものなので、酸化しやすく反射力がすぐに鈍るのでこれまた行き詰まり感を呈していきます。
その後、色消しレンズ(アクロマートレンズ)の発明、ガラスに銀メッキする技術の発達などにより、屈折・反射望遠鏡とも近代的な望遠鏡として生まれ変わっていきます。
近年ではより精緻な色収差補正を可能にするアポクロマートレンズや反射式と屈折式をあわせたシュミットカセグレン式やマクストフ望遠鏡なども市販されていますが、それぞれに長所・短所がありますのでご自分の観測スタイルや観測対象にあわせた望遠鏡選びをしてください。