コンパスはだれでもでも知っている磁石の性質を利用して作られています。
コンパスの中にある方針は磁化されていますから、一方がN極、他方がS極になっています。
そして「同極同士は反発し,異極同士は引き合う」というまさに磁石そのものの性質によってコンパスの方針は南北を指すのです。
それは地球そのものも磁石の性質を持ち、N極とS極があるからにほかなりません。
正確に言えば地球のN極とS極の間に磁力線が走り、コンパスはその磁力線に沿って引っぱられているのです。
ただし、コンパスの方針は真北を指すことはありませんので、地域によってはその使い方に注意が必要になります。
それは地球内部が均質ではないため、地球の磁力線が所々歪んでいることにより、地域によって方針の指す向きに偏差が生じるからです。
日本付近は比較的偏差の少ない地域にあたりますが、それでも北海道では方針は真北から西よりに約10度を指すことになってしまいます。
同様に東京付近では西に約7度ずれています。
この程度の偏差であれば日常的な使用には問題はありませんが、アメリカ大陸高緯度地方などでは東西にそれぞれ30~40度もずれる地域があります。
このような地域でコンパスを使う場合にはあらかじめ東西にどの程度偏差があるかを知っておく必要があります。
話はそれますが、恐るべきことに地球の磁極は5000年程の周期でN極とS極が逆転することが分かっています。
現在はN極が北極側にあり安定している時期ですからご安心を。
現在市販されているコンパスは風水や測量などの使用目的により何種類かに分類されますが、大別するとカプセルの中に特殊なオイルを封入したオイルタイプとオイルが封入されていないドライタイプの2種類に分けることができます。
オイルコンパスは内部に封入されたオイルの粘性により方針がふらつかず、スムーズかつ素早く北を指すことができます。
対してドライコンパスは接触抵抗がほとんどないため、方針が北を指して止まるまで少々時間が掛かります。
この点ではオイルフロートコンパスに分がありますが、ドライコンパスには方針を静止させるストッパーが付いたものがあります。
実はこのストッパーを使うことにより、オイルフロートコンパスにはできない特殊な使い方がドライコンパスにはできます。
用途に合ったコンパスを選ぶことが大切です。
街中なら「銀行の角を曲がるとコンビニがあって・・・」といった具合に目印になるものがたくさんあり道に迷うことはありません。
ところが自然の中では目印になるのは景色だけです。山や湖がどこにあるのかを知るには地図が必要です。
地図は上が北になっていますから、方角を調べるのにコンパスが必要です。また方角を地図と見くらべて現在位置を探すこともできます。
コンパスにも色々な種類のものがありますが地図と一緒に使う場合はオリエンテーリング用コンパスが便利です。角度を測れる回転板が付いたコンパスであれば使い方は同じですから参考にしてください。
コンパスを見るときは、からだの正面に両手で支え、胸の高さくらいでなるべく水平に持ちましよう。
コンパスの方針は赤い先端が北を指します、回転板は0度(N印)を前方を向くように合せておきます。方針の動きを見ながら、からだといっしよに回り方針の先端と0度(N印)が合うようにすれば北に向くことができます。
北を向くことができたら地図を広げてみましょう。
地図は北が上になっていますからそのままコンパスを動かさずに地図の上に置き、地図の向きを動かしてコンパスが指す北に地図の北を合わせます。
地図を北に向けたら、コンパスを使う前におぼえてほしい大切なことがあります。
コンパスの方針は北を差しますが、コンパスの示す北(磁北)と地図の北(真北)には少しの差がありこれを偏差と呼びます。
そのため地図を正確に合わせるためには偏差を直す必要があります。
地図には偏差(磁針方位)が角度で表示されていますので、コンパスを地図にのせたまま目盛りを見て、偏差の角度だけ針が西側を指すように地図を回して合せてください。
これで地図は正しく地図に置くことができました。
このコンパスを地図に正し<置くことを正置といいます。
磁北は日本では約5度~10度西によっています。
札幌では9度、東京ではフ度、鹿児島では6度西の方向を示します。
国土地理院発行の地図には必ず磁気偏差(磁針方位)が載せてあり、例えば「西偏6度50分」などと書かれていて真北よりも磁北は西に6度50分偏っているという意味です。
札幌では9度、東京ではフ度、鹿児島では6度西の方向を示します。
国土地理院発行の地図には必ず磁気偏差(磁針方位)が載せてあり、例えば「西偏6度50分」などと書かれていて真北よりも磁北は西に6度50分偏っているという意味です。
地図にあわせることができたら、どこか行きたい場所(目的地)を選んでみましょう。
地図の中で現在位置がわかっていれば目的地への角度を調べることができます。
【1】地図に、現在位置△から目的地○まで線を引き、その線にコンパスを合わせます。
(上図【1】)
【2】置いたコンパスを動かさずに回転板だけを回して、0度(N印)が針の先端に合うようにします。 (上図【2】)
【3】地図からコンパスを離し、地図もしまってください。
コンパスをからだの正面に正しく持ち、回転板の0度(N印)と針の先端が合うようにからだを回転させます。
合えばからだの向いている方向に目的地はあります。(上図【3】)
これだけわかればコンパスと地図は使えます。あとはこの応用です。
山菜取りなどしていると夢中になって気がつくと迷っていることがあります。
こんなときコンパスと地図を持っていれば今いる場所を調べることができとても役立ちます。
A:環(カン)
B:ストッパー
C:方針
D:石頭(セキトウ)
ドライコンパスは広い場所でのオリエンテーリングや登山などで、現在位置が地図上でわからなくなた時に大変役にたちます。
【1】分かっている目標をコンパスの石頭と環の延長線上に捉えます。
その状態のまま方針の動きがが止まったことを確認したら、ストッパーを押して方針を固定します。
(注)方針の振れがなかなか止まらないときには、コンパスを少し斜めにすると早く止まります。
【2】地図には南北に線が引かれています。その線とコンパスの方針の北が同じ向きで平行になるように置きます。
次にコンパスを平行移動させながら、石頭と環中心の延長線上に『分かっている目標』(△マーク)がくるようにします。
『分かっている目標』とコンパスの南の所に印をつけて長い線を引きます。
目標が1つだけしか分からない場合には、その線上のどこかに現在位置があります。
【3】もう1つ目標が分かれば、そこから同様に線を引き、交わった所が現在位置となります。
このようにして操作すると何度何分などと読み取る必要がなく、簡単に地図上に現在位置を記入できます。
オイルコンパスはストッパーが付かないのでこの使い方はできません。
アパートを借りるために現地視察、でもこの窓はいったい何向きかしら・・・・そんなときには。図のように建物の壁や塀にコンパスのフタを開いてあてがい、方針が止まったらストッパーをかけます。これを、図面上の同じ壁や塀の線に合わせれば、簡単に図面上に南北の線を引<ことができます。
コンパスの歴史は大変古く、いつ、誰が発見(発明)したかは定かではありません。
ガラスの発明も偶然の産物であったように、コンパスも磁気を持つ金属の偶然の発見から始まったと思われます。
古代ギリシャや当時の中国では磁化した金属の存在を既に知っていたようですが、南北を指す方位磁石が歴史に登場するのは中国の漢の時代、およそ2000年程前のことです。このころには東西南北、十二支等を示す羅盤へと発展しています。
11世紀の宋の時代になると、年月日や季節などを方位に置き換え方位磁石の周りに複雑に配した羅盤がつくられ、風水の基礎が出来上がっています。その後、13~14世紀に羅針盤はヨーロッパにもたらされ、バスコ・ダ・ガマやコロンブスそしてマゼランなどの勇気ある人々の探究心が大航海を成功させ、もたらされた地理上の発見が、閉ざされた中世ヨーロッパの世界観を打ち破ることになります。
日本においても中国文化を積極的に取り入れた奈良時代に、方位磁石がなんらかの形で伝えられたようです。
1600年にはイギリスにより東インド会社が設立され、東方貿易がにわかに積極的になったことから、なによりも船が必要となり、その船を正確に航海させるため羅針盤の研究や製作が盛んになりました。
当時の学者は磁石の方針がなぜ北を指すのかとの疑問にたいし北極星が針を引くためだとか、地球の北の方に磁石の山があるからだと考えていましたが、イギリスの医師ウイリアム・ギルバートは地球全体が一種の磁石であると考え実験的に証明しています。